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水野英子「 星のたてごと


実は個人史的には初めて買ったマンガ単行本なのです。雑誌はともかく貸本は借りる物であって買うものではないし、鈴木や光文社の手塚は買って貰ったものでした。
そこで繰り広げられていたのは架空の中世風王国での恋愛譚…そうそれまで淡い恋は書かれていた(だろう)が恋愛譚は無かった(だろう)−だってリアルタイムじゃないから..流石に(笑)
しかも この恋愛譚は真さしく命を賭けた愛!しかも破局にしか向えない設定!こんなハナシを四十数年前に弱冠二十歳の作家が書き得たとはタダタダ驚きです。

このマンガのの元ネタがワーグナー・ワルキューレとの説もありますが、ストーリーをググってみましたところ…

ストーリーは「星のたてごと」とは違うようです。というか「星のたてごと」はもっとゴッタ煮のようです。

確かに水野英子先生本人も認めているよう に「ニューベルングの指環」にインスパイアされていてます。ですが−「すばる」の消えた7人目の乙女伝説−など他の要素もイロイロと含まれていて、「すてきなコーラ」「セシリア」「こんにちは先生」のような元ネタ洋画 麗しのサブリナジェニーの肖像静かなる男とストーリーにあまり差異のない作品群とは異なっている と思っています。
ブロードウェイの星」は「スタア誕生」に、「ハニーハニーの素敵な冒険」は「八十日間世界一周」「グレート・レース」に似てはいますがストーリーも細かいエピソード・シチュエーションも異なっています。それと同様なのが「星のたてごと」だと思っています。まぁ上記2作の元ネタがそれだとすれば楽劇「ワルキューレ」は確かに元ネタでしょう。

惜しむべきなのはクライマックス直前の2人が再会し、転生してきた秘密と使命をユリウスと父伯爵に明かし、破局の予感を膨らませつつ別れ行く という重要かつ最大の盛り上がりになるべきエピソードが連載時には代筆であり、単行本化で描き直したときは既に絵柄が相当変わっていて異和感をどちらのバージョンで読むにしても感じられることなのです。

連載時病気だったとかで下川洋子氏が代筆され初出単行本−朝日ソノラマ68年6月発行時に書き直されました。今 入手可能な単行本でもその違いはクッキリと出ています。僅か数年のスパンなのに水野英子先生の画風は相当変化しています。

なんで休載するか、もっと早く単行本化しなかったのだろう と連載終了とほぼ同時に休刊した雑誌掲載作品であり、殆ど雑誌掲載少女マンガが(手塚を除いて)単行本化されなかった時期であることを無視してのムチャな願望が湧いてきます。ちなみに代筆部は書き直されたものと比べるとネームは全く同一ですがコマ割り、構図は相当ちがいます。B6サイズの別冊フロクもありましたから、そのサイズ用にコマを割った原稿だった故なのかもしれません。

参考までに元の雑誌連載時の絵をスキャンしてみたので上げてみます。左から少女クラブ62年4月号本誌・5月号別冊フロク表紙・同別冊フロク26−27p
尚、各画像はクリックにより拡大したものが別に表示されます。

62年4月号本誌 別冊フロク表紙 別冊フロク26~27p

素直な絵でアマチュアレベルよりかは遥に上ですが水野英子先生の絵でず〜と読んできてクライマックスでこの絵になると違和感は相当ありました−いやあります。
上げた画像で言えば−左画像の9コマ目の驚くリンダや右画像の67コマ目のユリウスやその下のワルキューレ姿のリンダなど、主人公の貌だちに特に目がいってしまいます。違和感は68年の書き直しと同程度か、それ以上に感じてしまいます。それは水野英子先生も同様に感じられた故に書き直されたので、感じなければ雑誌掲載のままで単行本化されただろうと思います。

また、この代筆の下書きか構図は水野英子先生だったんじゃなかろうかとも考えられます。ご覧のように別冊フロクの表紙絵は明らかに水野英子先生の絵ですからカラー原稿を上げてから、普通の原稿に取り掛かった時点でのトラブルと推測されます。そんな時点ではコンテは(たぶん)出来ているでしょう。だから下書きとまではいかなくても構図・コマ割は水野英子先生の指定だろうと推測しています。でもそれだと書き直したときにナゼ変えたのか との疑問が残るのです。まぁ単行本化当時(ブロードウェイの星あたり)の絵柄と最初の構想時の構図・コマ割はマッチしなかったから変えたとも推測可能ですが...

実は、この絵をみて「ウギャァ!なんじゃあ?この絵は!」と叫んだのは40年近くの前−68年のことで雑誌連載時ではないのです。サンコミックスの第3巻がナカナカでない。それで、ナニかの時に従姉妹に幼少の頃その従姉妹の部屋で読んだマンガが単行本化されているよ と言うと「切り抜きで持っている」とのこと! 春休みだったか5月連休に駆けつけ従姉妹の部屋で読みふけっている時に叫んだのです(笑)
同時に書き直しているからナカナカ出ないのだとも察しがつきましたが…

その数年後、マニアと呼ばれる連中−特にコレクターと呼ばれる人達−と知り合いになり、こりゃぁ貴重なものらしいと理解し、「頂戴(^^)」と言ったところ「読み返したいから」と言われたのでサンコミックス全3巻を買い求め替わりに置いてきました(^^;

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